肥大型心筋症(ひだいがたしんきんしょう)とは、心臓の筋肉である心筋症(しんきんしょう)の一種 です。心室中隔( しんしつちゅうかく)という心臓の右室と左室を隔たる部分の肥大を伴う、左室・右室あるいは両方の心臓の肥大です。

進行すると心臓の筋肉が肥大していることで心臓が上手く伸び広がることができないために、ポンプ機能を果たすことが出来ず心不全になります。突然死の可能性が生じるため、過去に失神・ふらつきがある場合は要注意です。

症状としては、最初は無症状で、どちらかという健康診断などで心電図の検査で異常がみつかることが多いです。進行すると息切れ、胸痛、動悸・脈の乱れ、ふらつき・失神などの症状を起こします。

原因としては、半数が遺伝の関連が疑われており、その他は不明です。

診断としては、心臓エコーや心臓MRIなどで肥大型心筋症に特徴的な所見をもって診断します。心筋生検や遺伝子検査に関しては有用とも考えられていますが全例には用いられていません。遺伝子検査に関しては保険適応がありません。

治療としては、2本柱として「突然死」と「心不全の進行」を予防することです。その他、心房細動などによる塞栓症、心臓の酸素需要増大による冠動脈虚血、心臓の弁の障害などに注意していく必要があります。

「突然死」のメカニズムとしては、ざっくり心臓から血液が充分量出ない、心臓の脈がバラバラになりポンプとして機能を失うことができないなどが挙げられます。

そのような危険性がある場合として、失神・心停止の既往、不整脈(心室細動・持続性心室頻拍)の既往、心エコー所見(左室壁が30mm以上、左室流出路圧較差50mmHg以上)、運動しても血圧が20mmHg以下しか上がらないというエピソードが考えられます。

「心不全の進行」に関しては、心臓の筋肉が厚いことで慢性的に心臓に負荷がかかり、結果心臓の機能が衰えていくメカニズムが生じるのでなるべく心臓に負荷がかからないように治療をしていく必要があります。

薬物療法としてβ遮断薬という心臓を守る薬を中心に治療を組み立てます。また左室流出路圧較差の軽減を狙ってシベンゾリン、ジソピラミド、ベラパミル、ジルチアゼムなどを使用します

ただし、肥大型心筋症にも様々なパターンがあります。(非閉塞性肥大型心筋症、閉塞性肥大型心筋症、心室中部閉塞性心筋症、心尖部肥大型心筋症、拡張相肥大型心筋症)パターンごとに治療法が異なるのでこちらに関しては一度専門施設へ紹介をして専門医と協議して頂いてます。(特に閉塞性肥大型心筋症というパターンでは日常診療でよく使用されるACE阻害薬/ARB、亜硝酸薬、ジギタリス、ニフェジピン、利尿薬などは使用出来ないので要注意です。)

薬物療法以外としては経皮的中隔心筋焼灼術、中隔心筋切除術等の外科的治療、ペースメーカー埋込術、埋込型除細動器、心移植などがあります。

日常生活として、飲酒、禁酒などは控えるのが望ましいと考えられています。無症状で、若年発症例や突然死のハイリスク群でない場合は治療を行わず、年1回心臓エコーで様子をみることもあります。一方で競技スポーツは突然死の観点から制限するのが一般的です。

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